IT活用セミナー
TOPページへ TOPページアーカイブスIT活用セミナー一覧2006年第3回
第3回 IT活用セミナー

日 時  :  平成18年11月22日(水曜日)
13:30〜17:00
場 所  :  熊本ホテルキャッスル 2F キャッスルホール
テーマ  :  「情報通信ベンチャーを成功に導くために」
〜ベンチャーの技術と資金調達〜
講 師  :  九州大学大学院 ベンチャービジネスラボラトリー 助教授  五十嵐 伸吾 氏
本セミナーは、独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)「起業家経営塾in熊本」と共催したものです。


事務局所感−セミナーを振り返って
  ベンチャービジネスの成功確立は極めて低く、投資家に紹介された事業計画からの成功確率は、1000分の3が通説とのこと。ベンチャーが必ず成功できる処方箋はなく、その成功確率を向上させるべくマーケティング戦略を練り、実践を行っていくしかないと講師は説きます。
  今回のセミナーでは、マーケティング基礎から、ベンチャーの採るべき基本戦略、そして資金調達の方法に至るまで、豊富な事例を交えて、歯切れよく、わかりやすく解説を頂きました。
  アンケートにご記入頂いた受講者の大半の方々が、「とても参考になった」と、ご回答を頂いており、有意義なセミナーだったかと思います。


講演要旨
1.マーケティング基礎
(1)ベンチャーマネジメントの考え方
  1. ベンチャービジネスの成功確率は極めて低い
  2. ベンチャーは、経営資源、信頼関係、経験に乏しい
  3. マーケットが広がれば、大手が参入する(経営資源に富むライバルとの競争)
  1. ⇒「絶対に成功できる」といった処方箋はない
  2. ⇒失敗は必ず訪れる、失敗の可能性を全て消すことはできない
  3. ⇒戦略は大企業の戦略と表裏であり、あらかじめ、どれだけの対策が講じられるかが大切
  4. ⇒学ぶより、どれだけ自分で考えられたかが重要
(2)マーケティングとは?
  従来のように、「企業」「製品」を起点として、営業マンが力で製品を売るのではなく、「顧客」を起点として「売れるしくみ」を創ることがマーケティングである。
(3)マーケティングの戦略プロセス
  マーケティング戦略は、「顧客を知る7つの"O"」の視点、「SWOT分析」などを活用した「環境分析」、「STPマーケティング」、「マーケティング・ミックスの構築」というプロセスを経て、構築される。
(4)顧客を知る7つの"O"
  顧客にとって、必ずしも「製品が良い」というだけが購買意欲に結びつくのではなく、例えば、「そのブランドが好きだから」といった理由で買う場合もある。以下に、顧客を知るための7つの視点を示す。
  1. Occupants:誰が市場の形成しているのか?
  2. Objects:何を買うのか?
  3. Objectives :なぜ買うのか?
  4. Organizations:誰が購買に関わっているか?
  5. Operations:どのように買うのか?
  6. Occasions:いつ買うのか?
  7. Outlets:どこで買うのか?

2.技術系ベンチャーと戦略
(1)テクノロジーの定義
  テクノロジーというと、パソコン、ソフトウェアといった製品に目をむけがちであるが、テクノロジー(技術)は、「知識を具体的な形に現すこと」と定義される。
  ◆5つのテクノロジー要素(Schumpeter, 1977)
  1. 新しい製品を生み出す
  2. 新しい市場を開拓する
  3. 新しい事業体制をつくる
  4. 新しい素材を採用する
  5. 新しいプロセスを採用する
(2)ベンチャー企業と産業特性
  Inc.500掲載企業(1982〜2000)をみてみると、各産業におけるベンチャー企業の割合には偏りがあり、例えば、飲食店(0.007%)、ホテル(0.005%)に対し、コンピュータ(4.2%)、薬品(1.8%)など、数百倍もの偏りがある。つまり、ベンチャー企業に有利な産業と不利な産業があるということであり、ベンチャーに有利な産業と不利な産業では、以下の4つの要素に違いがあると考えられる。
  1. 知識特性
  2. 需要特性
  3. 産業のライフサイクル
  4. 産業構造
(3)First-mover Advantage(先行者利得)
  ベンチャー企業の取るべき基本戦略として、先発優位を維持し、先発劣位に対して、十分な対策を講じておく必要がある。
  1. 先発の優位(First-mover Advantage)
    1. 技術的リーダーシップ
    2. 希少資源の先取り
    3. 買い手側の乗り換えによる手間(スイッチング・コスト要素)
  2. 先発の劣位(First-mover Disadvantage)
    1. 先発企業の投資に対して、後続参入企業が、ただ乗り(free-ride)できるケース
    2. 技術に関する不確実性や市場に関する不確実性が解消されるケース
  3. 先発の劣位(Cont.)
    1. 技術や消費者のニーズが、変化、転換するケース
    2. 環境変化に適応することが困難になってしまう「慣性」が既存企業に発生するケース

3.ベンチャーファイナンス概論
(1)資金調達の方法(例)
  銀行から資金を借り入れるだけでなく、以下のような調達方法が考えられる。
  1. アライアンス(既存企業からの調達)
  2. IPO(株式公開)
  3. 負債(例:銀行からの借り入れ)
  4. 私募発行(増資、社債)
  5. ベンチャーキャピタル(VC)
  6. リース、レンタル等
  7. 商社機能の活用  etc.
(2)銀行とVCのビジネスモデル
  銀行とベンチャーキャピタル(VC)のビジネスモデルは、それぞれ異なる。
  銀行は、預金者から集めた預金を企業に貸し出しを行い、利益は利鞘となるのに対し、VCは、企業に出資することで、キャピタルゲインを得る。企業が成功すれば、キャピタルゲインは、数百倍になる場合もある。
  このビジネスモデルの違いにより、相手企業も選好されることになるが、起業家の立場からみれば、自身のビジネススタイルにより、どこから資金調達を行うかを考慮する必要がある。
  1. 銀行
    1. 預金者へ返済義務があるため、「ローリスク・ローリターン型」となり、結果、安定した企業が貸出の対象となる
    2. 起業家の立場からみると、万一、倒産した場合でも返済義務は残る
  2. ベンチャーキャピタル(VC)
    1. 数百倍ものキャピタルゲインを期待して投資を行うことから、「ハイリスク・ハイリターン型」となり、結果、急成長が期待される企業が投資の対象となる
    2. 起業家の立場からみると、万一、倒産した場合でも返済義務は残らず、再チャレンジがしやすいメリットがある

4.日本のベンチャーキャピタル
(1)日米欧でのVC投資額比較
  日米欧でのVC投資額は以下のとおりであり、経済のサイズからみても、日本のVC投資額は低いと言わざるを得ない。
日米欧でのVC投資額比較
(2)VC新規投資企業の業種分布
  最近では、IT関係とバイオ関係にて過半数を占めている(2005年3月期)。
VC新規投資企業の業種分布図
(3)日米キャピタリストのキャリア比較
  アメリカのキャピタリストが、インベストメントバンク、経営コンサルタント、企業経営の経験者が過半数を占めるのに対し、日本のキャピタリストは、系列元の従業員や大学卒業者で過半数を占める。系列元の従業員は、2〜3年程度で出向元へ異動するケースが多い。
日米キャピタリストのキャリア比較

5.日本のベンチャーの実際 〜UFJベンチャー育成基金の例
(1)UFJ−TECH支援先企業の概況( データ出所:五十嵐伸吾[2005] )
  1. 都道府県別支援比率
    関東圏(61.8%)、関西圏(19.8%)と都市圏にて、約8割を占めている。
    UFJ−TECH支援先企業の概況(データ出所:五十嵐伸吾[2005]):都道府県別支援比率
  2. 起業時の社長の年齢
    30代から40代後半が多数を占めている。
    UFJ−TECH支援先企業の概況(データ出所:五十嵐伸吾[2005]):起業時の社長の年齢
  3. 支援企業の売上構成比率
    売上高10億円未満の企業が多数を占めている。
    UFJ−TECH支援先企業の概況(データ出所:五十嵐伸吾[2005]):支援企業の売上構成比率
  4. 支援企業の従業員構成比率
    10人未満の企業で過半数、50人未満の企業で多数を占めている。
    UFJ−TECH支援先企業の概況(データ出所:五十嵐伸吾[2005]):支援企業の従業員構成比率
(2)支援後の状況
  支援企業のうち約3割の企業が倒産したものの、248社中、104社で、約4000人の雇用が増加した。
  上位8%の成長企業が、全体の74%の雇用を創造したことになる。

まとめ
  1. ベンチャーの成否は、技術でなくビジネスで決まる。故に、マーケティングは非常に重要
  2. 大手の戦略は、ベンチャーのちょうど裏返し
  3. ベンチャーの成長率は、産業特性の影響を受ける
    1. ⇒「起業のしやすさ」と「成長の確率の高さ」は別問題
  4. 日本の起業環境は、2000年を境に大きく好転
  5. ベンチャーの「成功率」は極めて低い
    1. ⇒「1000分の3」が通説
  6. 新規企業ベンチャーの「生存率」は低い
    1. ⇒欧米では、10年間の生存率は4割を切るとの報告も
  7. 生存率を高める方法は、短期間で「成長」すること
  8. ファイナンスの相手先のスタンスは異なる
一番、大切なことは…
  何のために起業するのか?
    (起業は手段であって、目的ではないはず)

※参考
総務省
九州総合通信局
独立行政法人 情報通信研究機構
情報通信ベンチャー支援センター
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