IT活用セミナー
TOPページへ TOPページアーカイブスIT活用セミナー一覧2006年第1回
第1回 IT活用セミナー

日 時  :  平成18年8月8日(火曜日)
13:00〜14:00
場 所  :  熊本ホテルキャッスル 2F キャッスルホール
テーマ  :  「ユニバーサル社会の基盤としてのユビキタス技術」
講 師  :  東京大学大学院 情報学環 教授  坂村 健 氏


事務局所感−セミナーを振り返って
  モノ、場所にコンピュータを組み込むことで、いつでも、どこでも、誰でも安心・安全に暮らせるユニバーサル社会を目指す、ユビキタスコンピューティング。 「極端な高齢化社会を迎える日本において、日本発のユビキタスによるインフラ・イノベーションを、世界に先駆け実現する。」と、熱く語りかける坂村教授。
  現在、教授が最も力を入れられていることのひとつが、誰もが人の助けを借りず、自分の意思で自由に移動するための「自律移動支援プロジェクト」であり、本年度、九州で唯一、熊本県だけが進める「くまもと安心移動ナビ・プロジェクト」です。
  今回のセミナーは、日本国内はもちろん、世界各地での各種実験を精力的にこなされ、「ユビキタス」の第一人者である坂村教授のお話を聴くことのできた大変貴重な講演であり、「日本発のユビキタスによるインフラ・イノベーション」の世界に触れ、また、「くまもと安心移動ナビ・プロジェクト」の可能性を感じることのできた大変に素晴らしいご講演だったと思います。 参加された方々にとっても、大いに勉強、参考となったのではないでしょうか。


講演要旨
1.日本発のインフラ・イノベーションの必要性
(1)イノベーションとは?
  1. イノベーションとは、経済学的に、定義のある言葉であり、「利益を生むための"差"新たに生む行為」である。
  2. 遠隔地貿易を例にとってみると、生産コストの安さに注目して、中国でモノを生産し、日本に輸入する。しかし、沢山の会社が同じことを行うと、差は埋まり、利益は生まれなくなる。この場合、新しい国を開拓していくことが、イノベーションといえることになる。
  3. イノベーションは、「技術革新」を訳されることが多いが、今の技術は複雑であり、技術だけで革新を起こせるものではない。制度、法律といった社会構造のなかに、新しい技術を取り込むなど、総合的な考察が必要である。
(2)インフラ・イノベーション
  他のイノベーションを生むイノベーションには、2種あり、「要素技術イノベーション」と「インフラ・イノベーション」に分類される。
(@)要素技術イノベーション
  「コンクリート」、「合成ゴム」、「半導体」、「液晶」など、日本の得意とする部分である。
(A)インフラ・イノベーション
  「銀行」、「高速道路」、「電話」、「インターネット」など、今の日本で広く利用されているものであるが、日本で創られたものは皆無である。
(B)要素技術型とインフラ型の違い
  要素技術型では、製品とするまでに、他の多くの要素技術との「すりあわせ」が必要となる。例えば、「液晶」を例にとって考えてみると、「液晶」という要素技術があっても、それを製品、例えば、テレビとして製品にするまでには、各種回路、筐体などの他の技術要素とのすりあわせが必要となる。
  これに対しインフラ型では、「すりあわせ」は一切必要ない。道路を造っても、特に他の技術とすりあわせをする必要はなく、車は自由に道路上を走ることができる。インターネットにおいても、一度、しくみを創ってしまえば、自由にコンピュータを接続して利用することができる。
(C)さらに重要な違い
  要素技術型は、他のプロダクト・イノベーションとの連携が不得意である。再度、「液晶」の例をとると、「すりあわせ」を行ってテレビを作り、次にデジカメを作ろうとしても、再度、1からの「すりあわせ」が必要となる。つまりイノベーションを起こすには、大変な手間がかかるということである。
  インフラ型では、例えばWindowsの場合、ワープロソフトも在庫管理ソフトもWindowsに合わせて作ることにより、それぞれ専用のハードウェアが必要にはならない。
(D)インターネットが典型的成功例
  インフラ・イノベーションは、「すりあわせ」の少なさによる開発コストと時間を縮小でき、また、「ネットワーク」による新たなイノベーション機会創出につながり、イノベーションの効率化が図れることになる。
  ICTの世界では、「すりあわせ」の相対コストが大きく、「ネットワーク」の効果が大きいため、インフラ型の効果が特に大きい。インターネットが、その典型的成功例と言える。
(E)死の谷(death valley ⇒研究成果からその実用化までの「儲からない期間」)
  一般に、インフラ・イノベーションほど、それ自体の「死の谷」は深い。インターネットの場合を考えてみても、最初の研究論文の発表(1961)から、儲けが生まれている現在まで、約45年の期間が必要だった。
(3)日本の概況
(@)技術的ポイント
  1. ブロードバンドの普及 ⇒ FTTHの普及率世界一、パケットコスト世界最低
  2. マイクロエレクトロニクスの国 ⇒ 家電、自動車、デジカメなど世界をリード
  3. ロボットの国 ⇒ 鉄腕アトムからASIMOまで
(A)社会的ポイント
  1. 極端な少子高齢化へ
  1. 安全・安心・安定へ要求の強さ
  2. インフラ・イノベーションを生む力が弱い
(4)日本の状況の変化
(@)イノベーションのジレンマ
  イノベーションのジレンマとは、渡るための冒険的コストと渡ったことで自らの立地を崩すリスクのことであり、企業においては、株主に誠実であろうとすると、短期での収益を求められ、「死の谷」を渡れないことになる。
(A)日本でもイノベーションの効率化が必要に
  アメリカ式の企業統治により、大企業も余裕を失い、イノベーションのジレンマに直面している。従って、イノベーションの効率化が必要であり、そのために、意識的なイノベーションのための枠組み作りが必要である。
(B)イノベーションを起こすには、2番煎じではダメ!
  大型コンピュータでは、IBMを凌駕することはできない。
  パソコンでは、インテル、マイクロソフトを、凌駕することはできない。
  インターネットのサービスでは、グーグルが主役になるだろう。
  日本発のイノベーションを狙うには、2番煎じではダメであり、次の新しい世界を切り開く必要がある。

2.そこで、ユビキタスコンピューティング
(1)何のために?
  日本は、世界で最初に極端な少子高齢化国家となる。そのことを悲観するのではなく、発想を逆手にとって、今のうちに少子高齢化を迎えても安心・安全に暮らすことができるインフラを、世界に先駆けて整備することで、日本から世界に発信することができる。
(2)社会プロセスの効率化・自動化が必須
  少子高齢化ということは、労働力が減るということなので、社会の効率化のため、コンピュータを製品ではなく、モノや場所など、社会へ組み込む。それが、日本の未来を支えるインフラとなり、世界のインフラとなる。
(3)多様性を阻害しない
  現在は、100人いれば、100通りの生き方がある時代なので、高齢者はもちろん、全ての人々が、安全・安心で、かつ、多様性を阻害しないインフラとすることが必要である。
(4)仮想世界と現実世界をつなぐインフラ
  ユビキタスコンピューティングの基本は、状況の自動認識である。
  棚卸作業を例にとり、製品の在庫数をコンピュータ管理する場合を考えてみると、倉庫にある製品の在庫数を数え、コンピュータに投入するのは人間。つまり、現実世界とコンピュータ世界をつないでいるのは人間ということである。そうなると間違いが発生するため、棚卸作業が避けられなくなる。
  そこで、製品と倉庫にコンピュータを組み込み、状況を自動認識することで、人間に頼ることなく在庫管理ができることになる。
(5)ユニバーサル・デザインであることが重要
  こういったことを、特定の会社のためにだけでなく、社会インフラとして実現することで、業界、会社、組織の枠を超えた情報連携が可能となり、社会の最適制御が実現する。
  インターネットがオープンでユニバーサルであったため、現在のICT社会の重要基盤となったように、何にでも使っていい開かれたインフラとすることで、スケールメリットを活かし、さらに安く、小さくすることができる。

3.uIDアーキテクチャ
  状況認識の基本は「識別」であり、全てのモノ・場所・概念に個体識別番号(ucode)を付与(プライバシー問題を重視し人には番号をつけない)することで、例えば、食品に付与することで、いつ、誰が、どこで作ったものかが把握でき、食する人にアレルギーが発生しないかなど、自動的に判断ができるようになる。
  ucodeは、128bitであり、1日に1兆個の製品に付与することを、1兆年繰り返しても枯渇することない、オープンでユニバーサルな世界で唯一のユニーク識別番号である。
  モノには、ucodeのみを埋め込み、その情報は、インターネットのサイト上に置くことを基本アーキテクチャとしている。

4.多様な実証実験
(1)自律移動支援プロジェクト
  道路などにコンピュータを埋め込み、そこを通れば、場所がしゃべり、案内をする。誰もが人の助けを借りずに、自分の意思で自由に移動できるようにするためのプロジェクトで、熊本でも来年2月には、実証実験ができるよう、取り組みを進める。
(2)その他の実証実験
  この他にも、食品トレーサビリティプロジェクト、薬品トレーサビリティプロジェクト、ユビキタス医療プロジェクトなど、様々な実証実験に取り組んでいる。


−−−まとめ−−−
産官学民の協力により、ユビキタス・インフラを確立し、それを世界に発信する。
それは、日本にとっての必要。そして・・・世界への貢献となる。

※参考
YRPユビキタス・ネットワーキング研究所
T−Engineフォーラム
ユビキタスIDセンター
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